大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和43年(行ウ)34号 判決

西宮市松ヶ丘一五

原告

安藤貞子

同所同番地

原告

安藤敏弘

同所同番地

原告

安藤八重子

大阪市東区京櫛二丁目一五番地

原告

安藤正勝

西宮市久出ヶ谷町一〇二番地

原告

大越登美子

右五名訴訟代理人弁護士

小倉武雄

密門光昭

青野正勝

鈴木純雄

西宮市江上町二六

西宮税務署長

被告

伊藤輝男

右指定代理人

渡辺丸夫

島津弘一

前田昭夫

松田義一

河口進

右当事者間の所得税更正処分等取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの連帯負担とする。

事実

一  双方の申立

原告らは、「被告が昭和四一年一二月二四日付でした原告らの被相続人安藤正夫に対する昭和三九年分の所得税を金一六四三万〇三六〇円とする更正処分のうち所得税金一一四四万八五〇〇円を超える部分および過少申告加算税金三一万三四〇〇円の賦課決定処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め。

被告は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求めた。

二  原告らの主張

1  原告らの被相続人安藤正夫(以下亡正夫という)は被告に対し昭和三九年分所得税について総所得金額二二五三万三八七二円、課税総所得金額二一九三万七三〇〇円、納税額金一〇一六万二二八〇円の確定申告をしたところ、被告は昭和四一年一二月二四亡正夫の総所得金額三三六五万七〇三二円(うち譲渡所得金額八三八万二四五五円を含む)、課税総所得金額三三三〇万七九〇〇円、納税額金一六四三万〇三六〇円と更正し、右更正分について過少申告加算税金三一万三四〇〇円の賦課決定処分をした。

亡正夫は被告に対し右更正処分のうち譲渡所得金額八三八万二四五五円につき取消しを求める異議の申立をしたが、被告は昭和四二年二月一五日これを棄却した。亡正夫はさらに大阪国税局長に審査請求をしたが、同局長は昭和四三年七月二二日これを棄却した。

しかしながら譲渡所得金額八三八万二四五五円を課税対象として総所得金額三三六五万七〇三二円(課税総所得金額三三三〇万七九〇〇円)、納税額金一六四三万〇三六〇円とした更正決定およびこれに伴う過少申告加算税金三一万三四〇〇円の賦課処分は違法であるから取消されるべきである。

なお亡正夫は昭和四三年一〇月三〇日死亡し原告ら五名が相続により同人の地位を承継した。

2  被告主張のように亡正夫に別表(一)のうち譲渡所得に関するものを除くその余の所得があつたことおよび別表(二)の譲渡所得があつたことは認める。亡正夫に対する更正処分中譲渡所得以外についての被告の主張は争わない。

しかし次に述べるように亡正夫の譲渡所得額は実質上零である。

(一)  亡正夫は租税特別措置法(以下措置法という)三八条の六の適用を受ける。すなわち、別表(二)注1の不動産(以下本件不動産という)は亡正夫の事業用不動産であつたところ、亡正夫は別表(三)記載のとおり別の不動産を買受け各取得後一年以内に、同別表中3の物件は訴外新宝来運送株式会社に対し同別表中その余の物件は訴外関西梱包株式会社に対しそれぞれ賃貸し、引続き事業の用に供しているので、いずれも買換資産として措置法三八条の六の適用を受けるべきを実体的要件を備えている。

なお亡正夫の昭和三八年分の譲渡所得につき土地売却価額二億四八六八万八〇〇〇円のうち一億一四七四万四〇〇〇円は同土地の借地権者外日本急送株式会社の取得するところとなつたので、実質的な譲渡所得は金一億三三二五万六〇〇〇円である。したがつて同年分に対応する買換資産一億六一六二万四〇〇三円の中に本訴における買換資産が含まれているとしても、差額約金三〇〇〇万円については本件譲渡所得の買換資産として申告することは可能である。

(二)  そして亡正夫は昭和三九年度の確定申告をするに当り買換資産の特例の適用を受けたい旨の記載をしなかつたが、亡正夫においてやむを得ない事情があつた。すなわち、

亡正夫は訴外日本急送株式会社の代表取締役であつたが、同会社の経営状態が昭和三八年頃から悪化し昭和四〇年四月には大阪地方裁判所に対し会社吏生法の手続開始の申立を行い同年八月一六日その決定がなされ、亡正夫の本件所得税確定申告は同会社の倒産前後にわたる最も混乱した時期になされたものであるから、買換資産の特例措置を受けるにつき形式的手続に欠けるところがあるとしても、亡正夫の当時の窮状からみればやむを得なかつたものである。このことは亡正夫が申告以前に本件譲渡所得につき買換えの特例を受けなければならないことを充分認識していたとしても左右されることはない。

なお本件不動産は昭和三八年度の買換資産として申告されていたのに昭和三九年九月一日に他に譲渡したため昭和三八年度の買換資産に該当しなくなつたが、他の買換資産により昭和三八年度の譲渡所得は零となるから、譲渡したこと(すなわち買換資産に該当しなくなつたこと)を隠す必要はなかつた。

亡正夫は本件更正処分前の調査において本件譲渡所得が措置法の適用のないことを指摘されて始めてその不備に気付き、昭和四一年一一月一〇日被告に対し右措置法の適用を受けるための嘆願書を提出した。同嘆願書には措置法の適用を受けたい旨および買換資産の明細も一応記載されているから(嘆願書、異議申立書、本件において順次買換資産を変更したのは昭和三八年分の譲渡所得に対する買換資産が特定されなかつたからであるが、原告らが本訴において主張する買換資産は既に嘆願書提出および異議申立時において現実に買換取得されているから、実質面で特定されているといえる。)実質的には措置法三八条の六の四項所定の書類としての要件を具備しており、その付属書類等(これらは申告書記載の事実を証明する資料に過ぎない。)の不備を理由に法の適用を拒否することは形式的に過ぎる。国家機関である税務署は納税者に対しその納税手続が適正に行われるよう指導する義務があり、亡正夫は更正処分前に手続上の不備に気付き措置法の適用を受けたい旨嘆願しているのであるから、右嘆願書による申告が不備だとすればその補正につき指導勧告しないのは不当である。

なお本件については確定申告においても亡正夫の譲渡所得は零であり、亡正夫が申告の不備に気付きこれを是正したとしても零であり結果が異ならない点も十分考慮されるべきである。

三  被告の主張

1  亡正夫が昭和三九年分の所得税について原告ら主張のとおりの確定申告をし、被告が原告ら主張日時その主張の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をしたこと、亡正夫が原告ら主張の異議の申立および審査請求をしたがいずれも棄却されたこと、原告らがその主張のとおり亡正夫を相続したことは認める。

2  本件更正処分および賦課決定処分は次のとおり適法である。

亡正夫の昭和三九年分の総所得金額は三三六五万七〇三二円で、その内訳は別表(一)のとおりであり、そのうち譲渡所得の計算の明細は別表(二)のとおりである。(別表(二)の譲渡所得が更正処分の譲渡所得より多額であるのは更正処分時に計算を誤つたためである。)

そうすると、更正、加算税の賦課決定書のとおり亡正夫の控除総額は三四万九一一六円であるから、課税所得金額は三三三〇万七九〇〇円(一〇〇円未満切拾て)となり、これを所得税の速算表で計算すると、

<省略>

となる。

そして亡正夫の配当控除額は金四万九〇三八円、あん分比率は一〇〇〇分の九五九、源泉徴収額は金五九万一〇一〇円であるから、同人の所得金額は、

<省略>

となる。

そうすると亡正夫は金六二六万八〇八〇円を過少申告していたことになるから、その過少申告加算税は金三一万三四〇〇円となる。

したがつて被告のなした本件更正処分および賦課処分は適法である。

3  亡正夫が措置法の適用を受けるとの原告ら主張は否認する。

原告ら主張の本件不動産が亡正夫の事業用不動産であること、亡正夫が買換えを行つたことは知らない。訴外日本急送株式会社からの借地権買戻しは当該土地を第三者に譲渡するための直接の費用であるから、亡正夫が訴外川上土地株式会社に譲渡した金額は売買契約書に記載されている金二億四八六八万八〇〇〇円と解するほかなく、また別表(三)の1と3の物件は亡正夫が昭和三八年度譲渡所得計算書に記載した買換資産、取得見込資産の中に含まれ本件不動産の買換資産にはならない。

4  亡正夫が措置法三八条の六の四項に規定する事項を確定申告書に記載しなかつたことにつきやむを得ない事情があつたとの原告ら主張は否認する。

(一)  本件確定申告書は訴外日本急送株式会社の従業員である訴外尾本尚三が作成し、細部にわたつて内訳書や証明書の添付も十分になされており、郵送でなく持参して提出されていることからみて、本件申告書の作成はかなり余裕をもつてなされている。

右尾本は同会社の経理を担当していたが昭和三二年頃から亡正夫個人の所得税についても相談を受け、その申告書の作成を代行しており、右尾本が作成した前年の昭和三八年分所得確定申告書については、措置法三八条の六の適用を受けるため同条の四項に定める手続をしており、本件確定申告書作成の際に前年度の申告書控を参考にして手続についても十分に知識がある。しかも尾本は昭和四〇年二月二四日亡正夫の代理人として被告に対し、亡正夫の前年分の譲渡所得につき措置法三八条の六の適用が認められるかどうか調査してほしい旨申出ており、亡正夫および尾本は同条の適用につき多大の関心を持ち、かつそれだけの余裕を持つていた。

亡正夫が議長となつて昭和三九年九月一八日開催された訴外日本急送株式会社取締役会では、「天満本社及び営業所設置場所の宅地売却処分に係る借地権対価の収受と買換の問題に関する件」が議題となり、「当該物件の処分は会社の窮状を打開するために」なされ、かつ、「租税上の係争が生じ、社長個人に損害が及ぶときは会社がその責任を負うこと」が承認決議されている。したがつて亡正夫はもとより訴外尾本も本件事業資産の買換について十分認識があつたものといえる。

以上の事実からして「やむを得ない事情」を考慮する余地はない。

(二)  むしろ本件譲渡資産は昭和三八年分の譲渡所得申告の際に措置法三八条の六の適用を受けるための買換資産として申告されていたが、昭和三八年一二月一一日に取得されながら昭和三九年九月一日に譲渡されているので、前年分の買換の特例の適用を受けられなくなるため、亡正夫において意識的に譲渡所得の申告をしなかつたものである。

5  仮りに原告ら主張の「やむを得ない事情」があるとしても、措置法三八条の六の適用を受けるためには、本件更正決定を受けるまでの間に措置法三八条の六の四項に規定する事項(適用を受けようとする旨、譲渡資産価額、買換資産の明細及びその取得価額又はその見積額等)を記載した書類を提出しなければならないのに、亡正夫はこのような手続を踏んでいない。

原告ら主張の嘆願書はその形式においても内容においても右規定に該当する書類ではない。原告ら主張の理由書は異議申立書に添付されていた書類であつて、嘆願書に添付されていたものではない。また嘆願書、異議申立書記載の各買換資産と本訴で主張されている買換資産とは符合しないものがある。買換資産としていずれを選ぶかの選択特定は納税者によつてなされることが申告納税制度の建前であるから、どの物件を本係争年度の買換資産とするかの選択特定が申告時に亡正夫においてでていなかつたとすれば主張自体失当である。

四  証拠

1  原告らは、甲第一ないし第三号証を提出し、証人尾本尚三の証言を援用し、乙号各証の成立を認め、

2  被告は、乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし一一、第三ないし第七号証、第八号証の一ないし一一を提出し、甲号各証の成立を認めた。

理由

一  亡正夫が昭和三九年分の所得税について原告ら主張のとおりの確定申告をし、被告が原告ら主張の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をしたこと、原告らがその主張のとおり亡正夫を相続したことは当事者間に争いない。

そして亡正夫が昭和三九年分の所得として別表(一)のうち譲渡所得を除く所得があつたことおよび別表(二)の譲渡所得があつたことも当事者間に争いない。

二  右別表(一)の譲渡所得につき措置法三八条の六(昭和四〇年法三二号による改正前以下同じ)の適用があるかについて検討する。

1  措置法三八条の六は、一項で、「個人が、昭和三八年一月一日から昭和四〇年一二月三一日までの間に、その有する資産(土地又は土地の上に存する権利、建物及びその附属設備等)で事業の用に供しているものの譲渡をした場合において、当該譲渡の日の属する年の一二月三一日までに資産の取得をし、かつ、当該取得の日から一年以内に、当該取得をした資産(以下買換資産という)を所得税法の施行地にある当該個人の事業(以下法施行地内の事業という)の用に供したとき、又は供する見込みであるときは、当該譲渡による収入金額が、当該買換資産の取得価額以下である場合にあつては、当該譲渡に係る資産の譲渡がなかつたものとし、当該収入金額が当該取得価額をこえる場合にあつては、当該譲渡に係る資産のうちそのこえる金額に相当するものとして政令で定める部分の譲渡があつたものとする。」旨、第二項で、「当該個人が当該譲渡資産の譲渡の日の属する年の前年中に土地等の取得をし、かつ、当該取得の日から一年以内に当該土地等を法施行地内の事業の用に供したときにも同様とする。」旨、第三項で、「当該個人が、当該譲渡の日の属する年の翌年中に買換資産の取得をする見込みであり、かつ、当該取得の日から一年以内に当該買換資産を法施行地内の事業の用に供する見込みである場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときにも同様とする。」旨規定している。

しかしながら以上の規定の適用を受けようとする者は、同法三八条の六の四項、同法施行規則一八条の四の二項(昭和四二年大蔵省令第一三号による改正前)により、「譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書等に、これらの規定の適用を受けようとする旨並びに譲渡をした当該譲渡資産の譲渡価額、取得をし、又は取得しようとする買換資産の明細及びその取得価額又はその見積額」「譲渡資産の譲渡に係る譲渡所得の計算に関する明細、取得をし又は取得しようとする買換資産の取得年月日又は取得予定年月日及び当該買換資産を法施行地内の事業の用に供した年月日又は供する見込みの年月日」を記載しなければならないことになつている。そしてただ税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合は、措置法三八条の六の四項後段、三八条の三の三項ただし書、(昭和四〇年法三六号による改正前以下同じ)同法施行令(昭和四〇年政令九五号による改正前)二五条の六の七項、同条の四の六項、措置法三八条の六の五項、三一条六項、同法施行規則一八条の四の三項により、当該譲渡による所得につき国税通則法二四条から二六条までの規定による更正又は決定を受けるまでの間に、前記書類および買受資産又はその取得をした土地等に関する登記簿の謄本又は抄本その他これらの資産を取得した旨を証する書類を納税地の所轄税務署長に提出すれば、確定申告書に前記記載がない場合にでも、措置法三八条の六の一項ないし三項の適用を受けることができることになつている。

2  ところで亡正夫が本件確定申告書の提出に際し措置法三八条の六の一ないし三項の適用を受けようとする旨の記載をしなかつたことは当事者間に争いないので、同条四項後段、三八条の三の三項ただし書の適用があるかが問題となる。そして成立に争いない甲第二号証、乙第三・第四号証および弁論の全趣旨によると、亡正夫は本件更正決定前の昭和四一年一一月一〇日西宮税務署あてに嘆願書を提出したが、同書面には本件譲渡所得に対応する買換資産の内訳としては、「(イ)大阪市東淀川区加島町西四-三〇-一借地権九六七万一〇〇〇円(買換の事実税務調査済)、(ロ)建物及宅地一四〇〇万円とのみ記載されていた(その余の買換資産取得額合計二億五二六九万七〇六三円は宅地三一〇坪の売却価額二億四八六八万八〇〇〇円に対応する)。原告提出の甲第二号証嘆願書二丁以下の理由は一丁がタイプであるのと異なり筆書であり、またその冒頭の、「北足立郡戸田町宅地六三三坪売却処分に係る譲渡所得八三八万二四五五円決定処分に対し、次の理由を以つて買換資産取得として措置法適用を追認していたゞき度い。」(傍点裁判所)の字句からしても右嘆願書に当初から付属していたものでなく本件更正処分後に異議申立書に添付するため作成されたこと。」が明らかである。結局原告らが本訴で主張する買換資産については本件更正処分前に法に定める手続がなされていないから、税務署長がやむを得ないかどうか判断するまでもなく、措置法三八条の六の一ないし三項の適用を受けることはできない。

3  原告らは、被告が嘆願書による申告を補正するよう勧告指導しなかつたことを云云する。

しかし勧告指導しなかつたことにより亡正夫のなした手続上の瑕疵が治癒されるものではない。

のみならず嘆願書が補正されていたとしても、確定申告書に措置法三八条の六の一ないし三項の適用を受ける旨の記載をしなかつたことについてやむを得ない事情があつたとは認めがたい。すなわち、

原告らは、やむを得ない事情として亡正夫の経営する訴外日本急送株式会社が確定申告をなす期限後の昭和四〇年四月に会社更生法の手続開始の申立を行うほど右期限時には経営が悪化し亡正夫が窮状にあつたと主張し、証人尾本尚三の証言によると、原告ら主張のように亡正夫の経営する日本急送株式会社の経営状態が悪化していたことが窺われる。しかし成立に争いない乙第一号証、第二号証の一ないし四、第五号証、第六号証、第八号証の一ないし一一、証人尾本尚三の証言および弁論の全趣旨によると、「(1)亡正夫は前年の昭和三八年分所得税の確定申告書において譲渡所得につき措置法三八条の六の適用を受けるための記載をし、措置法三八条の六について知識があつたこと、(2)右手続は従前から亡正夫の雇人としてその経理事務を担当していた尾本尚三があたつていた、そして本件昭和三九年分所得税の確定申告書の作成も尾本尚三があたり期限内に提出したが、右申告書では医療費控除を受けるため内科、歯科医に対する支払医療費三〇万八五九〇円を記載し、また不動産所得として九件の収入二二〇七万七八六八円(本件譲渡所得の発生した戸田町の地代を含む)の記載をしながら、譲渡所得につきなんらの記載をしていないこと、(3)嘆願書も税務署の調査が始まつた後に提出されたものであること が認められるので、原告ら主張のやむを得ない事情があつたことは認められない。

したがつて内容に入るまでもなく、本件譲渡所得につき措置法三八条の六の適用はない。

三  そうすると、亡正夫の昭和三九年分の譲渡所得金額は別表(二)のとおり金八五三万二四五五円となり、総所得金額は別表(一)のとおり金三三六五万七〇三二円となる。

そして亡正夫の控除総額が金三四万九一一六円であることは当事者間に争いないから、課税所得金額は金三三三〇万七九〇〇円(一〇〇円未満切捨)となり、これを所得税の速算表で計算すると、

<省略>

となる。

また亡正夫の場合、配当控除額は金四万九〇三八円、あん分比率は一〇〇〇分の九五九、源泉徴収額は金九万一〇一〇円であることは当事者間に争いないから、同人の所得税金額は、

<省略>

となる。

ところで亡正夫は納税額金一〇一六万二二八〇円として確定申告していたから、金六二六万八〇八〇円だけ過少申告されていたことになり、その過少申告加算税は国税通則法六五条により右金額の一〇〇分の五の金三一万三四〇〇円となる。

したがつて被告のなした本件更正処分および賦課処分は適法である。

四  よつて右処分の取消を求める原告らの請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がないから失当として棄却し、民訴法八九条、九三条一項但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村瀬泰三 裁判官 糟谷邦彦 裁判官友添郁夫は退官につき署名捺印することができない裁判長裁判官 村瀬泰三)

別表(一)

<省略>

別表(二)

<省略>

注1 亡正夫が昭和三九年九月一日訴外株式会社住友倉庫に埼玉県北足立郡戸田町大字新曾字下前谷五〇六二番地宅地二九九坪(九八八・四二平方米)および同所五〇六三番地宅地三三四坪(一一〇四・一三平方米)を譲渡した価額

注2 亡正夫が昭和三八年一二月二〇日訴外ハレター製菓株式会社から右物件を取得した価額およびその時の仲介料、登録税等

注3 旧所得税法九条による譲渡所得等の特別控除額

別表(三)

<省略>

注 5は4の建物の増築費等である

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!